子どもが不登校になったときの相談先・支援機関リスト

担当者:森崎 晃

 筆者はこれまで民間事業者として約10年間、大学教員として約3年間、不登校支援に関する実践と研究を重ねてきました。不登校状態にある児童生徒の増加に伴い、不登校の子どもを持つ、あるいは持った経験のある保護者のみなさんに向けて、講演などを行う機会も増加しています。

 近年ではウェブサイト上に多くの情報が掲載され、保護者がさまざまな相談先・支援機関について知ることは容易になりつつあります。しかしながら、実際に保護者の声を聞いてみると、どうでしょうか。

 必ずしも十分な情報を得られているわけではない実態が浮かび上がります。「情報が各サイトに散らばっていて見通すことができず全体感が分からない」や「検索エンジンの広告に表示される機関をどこまで信用してよいのか分からない」といった声が多いのです。

 そこで今回、「子どもが不登校になったときの相談先・支援機関」について整理することとします。なお、不登校になったときどんな相談先や支援機関を利用するか選択するのは最終的には保護者自身であり、さらにいえば子ども自身であるという前提に立ち、本レポートは特定の相談先や支援機関を推奨するものではなく、あくまで当事者の助けとなるべく選択肢を提示することを目的としています。

 

----------目次

1】総論

 相談先・支援機関リスト

2】各論

 公共の支援

  校内フリースクール

  校内別室

  教育支援センター

  学びの多様化学校

 民間の支援

  医療機関等

  親の会・コミュニティ

3】まとめと考察

 リストの活用法と状態別のファーストコール先(例)

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1】総論

 

 子どもが不登校になったとき、相談できる先や支援を受けることのできる機関として何があるのか。これをあらかじめ把握している保護者は、当然ながら少数派です(当事者でない限り不登校に関する情報に触れる機会は少ないですし、なにより不登校という事象は事前に十分な予告や予兆を伴うわけではなく、準備が万端であるという状態は基本的には実現しませんので)。ではどうすればよいのか。

 最終的にどの相談先や支援機関を利用するのか、あるいは利用しないのかを判断するのは保護者や子ども自身ですし、一人ひとりの状態によって有効なつながり先やつながり方は異なります。しかしひとついえるのは、選択肢を知らねば考えることも取捨選択をすることも叶わないということ、逆にいえば選択肢を体系的に知ることはより適切な相談先・支援機関とのつながりを実現するのに有効な手段であるということです。

 以下に、筆者が実践を通し整理した「子どもが不登校になったときの相談先・支援機関リスト」を掲出します。なお、基本的には小学生・中学生を念頭に置き整理しています。

 

相談先・支援機関リスト

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 【2】各論 

 上記のリストで取り上げた各相談先・支援機関について、以下その特徴などを整理します。

公共の支援

 子どもに行き渋りや不登校の様子がみられたとき、もっとも身近な相談先として浮かぶのはやはり学校です。かつては不登校の子どもの支援は担任教諭が完結する、あるいは管理職教諭が個人ベースで対応する、といったケースが通例でした。

 しかし現在では、多くの学校において、校内で不登校の子どもを支援する仕組み・体制づくりが進んでいます。それまでは聞こえてこなかった情報も、相談をすることで得られる可能性があります。

 なお、校内フリースクール、校内別室、教育支援センターには自治体や学校ごとの独自の愛称で呼ばれることも多く(たとえば「スクールS」「なごやフレンドリーナウ」など)、いっけん該当する支援機関が存在しないように見えても問い合わせをしてみると実際には存在していた、というケースがありますので留意が必要です。

 

校内フリースクール

 校内フリースクールは校内教育支援センターとも呼ばれ、学校内に設置された公営の〝フリースクール〟です。近年急激に設置が進み、全国の公立小中学校約3万2千校のうち、2023年には約1万校に設置済であるとされ、文部科学省からはさらに6千校への設置を行うという方針も示されました。

 校内フリースクールには基本的に専用教室が確保され、専門スタッフが常駐します。開室時間は平日の日中です。フリースクールという呼称の通り、集団活動やその他の活動を通しエネルギーを回復するための場として運営されますが、主に自習形式での学習支援も行われています。出席扱いについては、極論ではありますが、一瞬でも在室をすれば出席扱いとしている例がほとんどです。

 なお、私立学校においても、校内フリースクールという呼称でこそないものの、下記の校内別室が常設化する形で、事実上の校内フリースクールとして機能するケースが存在しています。

 校内フリースクールは他の支援機関と比べても新しい取り組みで、場合によっては運営がまだ手探りであるケースもあり、良い意味での事前確認と見極めは必要かもしれません。

 

校内別室 

 校内別室は従前からよくとられる学校内での不登校支援のあり方のひとつで、教室に入ることが難しい子どもが空き教室や保健室などに登校するものです。教室は常設ではなく、スタッフが常駐しているわけでもありません。実態としては担任を持たない教頭や副校長が通常業務にアドオンで支援にあたりながら、担任や教科担任が受け持ち授業の合間に巡回し声かけを行うというケースが多数を占めます。どうしても人手不足になってしまうのは、組織として仕組みや体制づくりがされたものではなく、いわば緊急避難的に運営されるものである以上、支援者を新たに配置することは叶わないためで、やむを得ない側面があります。

 ここでは主に、自習形式での学習支援が行われます。

 なお、校内フリースクールが設置された学校にあっては、校内別室は廃止ないし校内フリースクールへ統合されるのが通常です。

 

 次に学校外の支援機関を取り上げます。

 

教育支援センター

 教育支援センターは学校外に設置された公営の〝フリースクール〟で、かつては適応指導教室とも呼ばれていました(一部地域では現在もその名で呼ばれています)。全国の市区町村の、6割以上に設置済であるといわれます。

 教育支援センターは平日の日中に開室されますが、特徴のひとつとして在籍校に所属したまま通う、いわばダブルスクール状態が許容されていることが挙げられます。実際に、教育支援センターへの通所と在籍校への登校を併用する子どもも多く、エネルギーの回復状態にあわせながら通所頻度を調整していくといった利用法も可能です。

 教育支援センターには専任の支援スタッフが常駐しています。集団活動を通したソーシャルスキルの獲得や、主に自習形式での学習支援が多く行われ、一部地域では個別カウンセリングを通した心理支援も行われています。出席扱いについては、校内フリースクール同様に、一瞬でも在室をすれば出席扱いとしている例がほとんどです。

 一点留意したいのが、「進路指導」については、在籍校との認識のずれが生じるリスクへの配慮もあって、基本的には行われないという点です。ただし、支援員と子どもとのコミュニケーションの中で、進路指導に近いことが実施されるケースは存在し、たとえば高等学校や専門学校のパンフレット、入学試験の過去問題集が配置され、子ども自身の自発性をもって閲覧や使用は可能である、そしてそれを支援員もサポートする、というのが多くの実態です。

 教育支援センターの窓口になるのは市区町村の教育委員会です。「(市区町村名)+教育支援センターor適応指導教室」で検索をすることで連絡先にたどりつくことが多くの場合可能ですので、まずは問い合わせや相談、見学から始めてみるとよいかもしれません。

 なお、私立学校に在籍する児童生徒の受け入れ可否については、市区町村により判断が分かれるところですが、通所を認めている地域も決して少なくありません。

 

学びの多様化学校

 公共の支援機関の最後に、学びの多様化学校を取り上げます(2023年度までその呼称は不登校特例校でした)。学びの多様化学校は在籍校からみれば「校外」ですが、「学校」と名を関する通りひとつの学校であり、在籍校から転校をしたうえで通うことが前提となります。

 学びの多様化学校の最大の特徴は、柔軟なカリキュラム運営です(呼称に「特例」を含んだ通り、不登校状態にある子どもの実態に配慮し、特別な教育課程を編成のうえ実施しています)。具体的には、年間の総授業時数を1〜3割程度減じ、子どもにとってゆとりある運営や、ソーシャルスキルを育むための独自授業を行っています。

 あくまで学校の一種であり、学習支援は主に授業形式で行われ(適宜一部に個別指導形式を織り交ぜるケースもあります)、進路指導や集団活動も平時より実施されています。

 現在、設置数はまだ少なく、小学校・中学校・高等学校をあわせても35校程度に留まりますが、文部科学省は2027年までに全都道府県に設置のうえ、将来的にはその校数を300にまで増やすことを目指しています。

 学びの多様化学校の場合も同じく、窓口になるのは市区町村の教育委員会です。ウェブ検索をすることで連絡先にたどりつくことが多くの場合可能ですので、まずは問い合わせや相談、見学から始めてみるとよいかもしれません。

 なお、私立学校に在籍する児童生徒についても、同様に転校(すなわち私立学校からの退学)を前提としますが、通うことが可能です。

 

民間の支援

 次に、民間事業者の提供する支援について、ここでは「医療機関等」と「親の会・コミュニティ」を取り上げます。

 

医療機関等

 子どもが身体的な不調を訴えているといった場合にはメンタルクリニックに、あるいは悩みや不安を聞いてもらうことで気持ちの整理がつきそうだといった場合にはカウンセラーに、それぞれかかることが有効です。

 実際に不登校状態にある子どもやその保護者がこうした医療機関等をどのように利用するかはケース・バイ・ケースではありますが、大きな特徴として、メンタルクリニックであれば医学的見地からドクターストップをかけることができ結果として無理な登校の強制につながらず症状を深刻化させず済むというメリットが、カウンセラーには子どもだけでなく保護者に対しても心理支援を行うことができるというメリットが主として挙げられます。

 

親の会・コミュニティ

 不登校状態にある子どもを支援する公共施策が充実していく一方で、保護者の公共支援についてはまだ整備が進んでいるとは言い難い状況です。

 子どもが不登校になったとき保護者が不安をおぼえるのは自然なことですし、子どもへの接し方を探るにあたっても、また保護者自身にとっての支えを見つける意味でも、同じ境遇にある、あるいは経験者である保護者と交流をしたいと考えるのも当然です。そして実際に、こうした交流や情報交換は、身近な先達の例を知り、悩みや不安を分かち合うことのできる機会として多くの場合、有効です。

 最近では、各地域に、ゆるやかな集まりとして、あるいはNPOや一般社団法人という組織形態をとった支援団体として、保護者たちのオープンな会が活動するケースが増えてきています。関心ある方は「(市区町村名or都道府県名)+不登校+親の会」などのワードでウェブ検索をし、連絡を取ってみることを勧めます。

 また、上記のような保護者たちの自助的な集まり以外にも、不登校支援に携わるNPOや一般社団法人、メディアが主催する保護者の交流会やコミュニティも存在します。

 

 【3】まとめと考察

 ここまで、「子どもが不登校になったときの相談先・支援機関」について一覧化のうえ、整理をしてきました。

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リストの活用法と状態別のファーストコール先(例)

 

 あらためて意識したいのは、同じ不登校という事象ではあっても、その背景や状態は一人ひとり異なり、有効な相談先や支援機関も異なる、ということです。であるからこそ、選択肢を体系的に知り、十分な情報を得たうえで、適切な相談先・支援機関とのつながりを実現していくことが重要です。

 また、上記に挙げた各相談先・支援機関は、内向きに閉じた組織ではなく、多くの場合、他の機関とも連携しながら支援にあたる、有機的な組織です。ですから、まずは問い合わせ・相談をしてみることで、新たな機関へとつながり、よりよい支援を受けられる機会が生まれる可能性があります。

 とはいえ、子どもの状態によって、あるいは保護者の状態によって、ファーストコール先は使い分けてもよいかもしれません(校内でのつながり醸成に手を尽くした後であれば特に)。以下に筆者がこれまで接してきたケースを踏まえた例をまとめておきます。

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 加えて、地域によっては「相談窓口」を設けているケースも少なくありません。「相談窓口」というのはいわば総合窓口にあたるもので、保護者がそこに相談をすると、相談窓口側ではつながりのある各支援機関のうちから、その子どもに最適と思われる先を保護者に対し紹介する、というものです。

 まずは相談窓口へ連絡をしてみる、という方法も良いかもしれません。ただし、文部科学省もウェブサイト上で言及しているように(リンク)、相談窓口は地域によって名称等が異なりますので詳しくはやはり問い合わせを行う必要があります。

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