不登校児童生徒を支援するツールのひとつとしてタブレット学習を導入
リクルート次世代教育研究院は名古屋市教育委員会と協働し、2017年8月より、市内の子ども適応相談センター(通称:なごやフレンドリーナウ)において、スタディサプリ小学講座・中学講座を活用した学習支援を実施しています。
(なごやフレンドリーナウについてはこちら)
http://www.city.nagoya.jp/kyoiku/page/0000050017.html
ICT教材・タブレット教材を用いた不登校支援はこれまでにも例がありますが、目的を学力補充ではなく、利用する児童生徒自身が普段なかなか学校での授業を受ける機会がないことに起因し抱える精神的な負荷を和らげること、また学習上のつまずきを知ることに置いた、より児童生徒の目線に立った学習支援としています。
したがって、利用はあくまで児童生徒のうち希望者とし、利用方法や取組教科・単元についても自主性を尊重しながら、児童生徒とスタッフとで話し合いながら決めていくことで、使用をしています。
利用状況と児童生徒へ実施したアンケート結果を報告します。
利用状況とそこから分かる不登校支援において有効なタブレット学習活用法
本格的に利用を開始して3ヶ月が経過し、以下の利用状況 がみえてきました。
- 利用者数:45名
- 利用機能:授業動画、ドリル(授業動画に紐づく、一問一答方式のドリル)
(1)1日平均20人以上の児童生徒がタブレット学習を利用
(2)ドリルよりも授業動画を中心に利用が進み、平均で7時間37分(学習指導要領上で40単元以上にあたる分量)授業を受けている
(3)一方でドリルの利用量は平均で38問と少ない
上記の結果と、児童生徒の様子をあわせて考えるに、下記のことがいえると考えています。
まず、学校の授業を受けていない期間を抱える不登校児童生徒にとって、学習はさかのぼり学習(過学年の内容にさかのぼって学習する)となることが多く、そこでは問題を解くのではなく授業動画からはじめ、すなわち演習の前に理解を得るほうが心地よいこと。
次に、同じくさかのぼり学習においては、紙教材で取組む場合に比べて、タブレット教材でさかのぼりを行うほうが、抵抗感が少なく、取組みのハードルが低いということ。
そして、とはいえ、学習はタブレット教材だけでは完結せず、授業動画にて理解をしたうえで、アウトプットは手元の紙教材 にて問題を解くことで実施する児童生徒が多いということ。
アンケート結果から浮かび上がる児童生徒の変化
アンケートでは、タブレット学習への満足度と、タブレット学習利用前後の変化について聞いています。
アンケート実施概要
- 実施時期:2017年11月下旬
- 対象者:期間中にスタディサプリを利用した児童生徒
- 回答数:27名
タブレット学習への満足度は100%(とても満足:78%、やや満足:22%)と高く、スタディサプリが児童生徒にとって利用したくなる選択肢として有効に機能していることがわかりました。
タブレット学習を利用する前後の変化では、およそ8割の児童生徒が「勉強が楽しくなった」「勉強に自信がついた」と回答しており、事業の目的である、ふだんなかなか授業を受ける機会がないことに起因し抱える精神的な負荷を和らげること、また学習上のつまずきを知ること、の機会を提供できているとわかりました。
今後の展望
上記は開始4ヶ月程度での検証結果ではありますが、授業動画を中心としたタブレット学習が不登校児童生徒の学習支援において有効に機能している一例といえます。
今後、より協働と考察を深めながら、ひとりでも多くの児童生徒に機会をもっていただくことができるよう、取組みを続けてまいります。
※この記事は、2018年3月にスタディサプリ教育AI研究所に掲出したレポートを転載しております。