リスキリングはなぜ必要なのか。「スタディサプリENGLISH」担当者が語る、社員のキャリアと企業の成長を繋ぐ"学びの伴走"

担当者:水谷 伊吹

社会人の「学び直し(リスキリング)」が国策としても推進されるなか、企業のグローバル化や多様な働き方の進展に伴い、社員の英語学習の重要性がかつてないほど高まっています。しかし、多くの人事・企画担当者が「導入コストに見合う効果が得られるか」「社員が継続して学習してくれるか」「どう運営すれば成果に繋がるのか」といった課題に直面しているのも事実です。実際、企業が社員に学びの機会を提供することは、組織にどのような「良いこと」をもたらすのでしょうか。

今回、リクルートが提供する「スタディサプリENGLISH」の法人向けサービスを牽引し、多くの企業の英語学習に携わってきた井上順子と横田海斗にインタビュー。

ツール導入の先にある「学習の習慣化」と「成果の創出」をいかにして実現しているのか。導入企業や社員から寄せられたリアルな声、成功するプロジェクトの共通点、そして、2人がこの仕事を通じて見据える「学びが拓く未来」について、聞きました。

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【株式会社リクルート まなびDivision教育支援統括部 法人営業部 法人1グループ グループマネージャー・横田海斗(左)/株式会社リクルート まなびDivision教育支援統括部 法人営業部 部長・井上順子(右)】

なぜ今、企業の「英語学習」ニーズが増加しているのか

―――まず、2人が担当している「スタディサプリENGLISH」の法人向けサービスについて、具体的な取組内容を教えてください。

井上:私たちは、企業の「英語力を上げたい」「グローバル人材を育成したい」というニーズに対し、「スタディサプリENGLISH」を活用した学習の支援を行っています。

以前からある「海外赴任や昇格要件(TOEIC®スコアなど)のために必須で学ぶ」という層への支援はもちろんですが、最近増えているのは「自己研鑽」としての導入です。社員に学習機会を提供したいという企業様に対し、手挙げ制の研修や福利厚生の一環として提案するケースが多くなっています。

横田:私たちのサービスの特徴は「B to B to C」であることです。企業(B)への導入ですが、実際に使うのは社員(C)の皆様です。

認知度が高く、安価で始められるという「スタディサプリ」の強みを活かし、まずは社内向けの説明会やキックオフセミナーを実施して「これなら自分もできそうだ」と手を挙げていただくところからサポートします。

さらに、学習期間中の中間振り返りやデータ分析に基づいた施策の提案など、単にツールを納品して終わりではなく、学習継続のための「伴走」を重視しています。

 ―――実際に、導入を検討する企業は増えていますか。また、企業はどのような狙い(目的)やKPIを設定しているケースが多いですか?

井上:お問い合わせいただく業種の幅も数も確実に増えていますね。背景には大きく二つのトレンドがあると感じています。

一つは「人的資本経営」です。上場企業を中心に、人材育成への投資やスキル要件の可視化が求められるなかで、学習機会の提供自体が企業の責務となりつつあると感じています。

もう一つは「自律的キャリア形成」の支援です。英語ができることで、海外赴任や昇格のチャンスなど、社員自身のキャリアの選択肢が広がります。企業側も、社員のエンゲージメント向上や成長支援の一環として、英語学習を推奨する動きが活発化しています。

横田:KPIについては、大きく分けて「学習者数を増やしたい(底上げ・風土醸成)」場合と、「英語力を確実に上げたい(実利)」場合があります。

例えば前者であれば、まずは「学習習慣の定着」をKPIに置き、学習時間や完了率を追っていきます。後者であれば、TOEIC®のスコアアップや、昇格要件のクリア人数などを目標に設定します。

私たちは「人材開発パートナー」として、企業ごとの課題感に合わせてKPI設計から入り込み、時には「今の目標設定ではハードルが高すぎて継続しないので、まずは習慣化から始めませんか」といった提案も行っています。

キャリアが拓けた社員の声。現場で起こるポジティブな変化

―――ツール導入だけでなく、伴走型のサポートが特徴だとわかりました。実際に導入した企業や社員の方々からは、どのような反応が届いていますか?

横田:印象的なのは、あるメーカー企業の事例です。そこでは課長昇格要件としてTOEIC®600点が設定されていました。ビジネススキルや技術力は高いのに、英語がネックで昇格できない方がいらっしゃったんです。

その方が『スタディサプリENGLISH』で100時間ほど学習され、もともと400点台だったスコアを一気に600点台まで伸ばして昇格を果たしました。

これは単なるスコアアップの話ではなく、自ら学び、スキルを獲得し、自らの手でキャリアを切り拓いたという「シンデレラストーリー」です。こうした成功体験が社内に共有されることで、「あの人ができたなら自分も」と、組織全体の学習意欲に火がつくことがあります。

―――社員個人の変化だけでなく、導入を推進した人事・企画担当者の方の視点ではどうでしょうか。企画時の迷いや、導入後の成果など、印象的なストーリーがあれば教えてください。

横田:人事担当者の方によく提案するのは、「御社3000人のなかで英語学習に手を挙げる社員は何人くらいいると思いますか?」という問いかけです。

「うちは忙しいから100人くらいかな」と予想されていても、実際に「スタディサプリ」の知名度と手軽さを活かして募集をかけると、300人、400人と予想を遥かに超える手が挙がることがあります。

「社員は学ばない」のではなく、「きっかけがなかっただけ」あるいは「これならできると思える教材がなかっただけ」だと気づくんですね。

潜在的な学習意欲が可視化されることで、人事担当者の方も「社員への投資価値」を再認識し、そこから本格的な費用補助や制度設計に繋がっていくケースが多いです。

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社員の主体性を引き出し、組織の力にするための「仕掛け」とは

―――多くの企業の導入・運営をサポートされてきたなかで、プロジェクトが「うまく回る」企業にはどのような共通点や特徴があると感じますか? 

横田:最も強力なのは「トップからのメッセージ」があることです。社長や役員が「なぜ今、我が社に英語が必要なのか」「学ぶことがどうキャリアに繋がるのか」を経営戦略と絡めて発信している企業は、やはり社員の目の色が違います。

例えば、ある大手メーカー様では、海外売上比率の向上という経営課題に対し、トップダウンで英語力強化の方針が打ち出されました。それに伴い、人事部が具体的な施策として「スタディサプリENGLISH」を導入し、内定者期間から学習を推奨するなど、本気度が現場に伝わっています。

井上:もう一つは、人事担当者が「社内マーケター」として機能していることです。

単に「勉強しろ」と言うのではなく、横田が話したような「成果を出した同僚(シンデレラストーリー)」を社内報で取り上げたり、チーム対抗戦にして「学習時間」を競わせたりと、学習を「孤独な戦い」にしない工夫をしている企業は継続率が高いですね。

隣の席の同僚ががんばっている姿こそが、何よりの刺激になりますから。

―――これから導入する企業に向けて、今までの知見から「こういう目的設定や運営をしていくと良い」というアドバイスがあればお願いします。

井上:最初から完璧な目的やKPIが決まっていなくても大丈夫です。「社員に変化を起こしたい」という想いがあれば、そこから一緒に形にしていきましょう。

大人の学びの本質は「行動が変わること」だと思います。まずは小さくてもいいので「学習する集団」をつくり、そこで起きた変化や成功事例を組織全体に広げていく。そんな「変化の起点」をつくるつもりで、まずは一歩を踏み出してみてはいかがでしょうか。

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「学び」が個人と社会の未来を拓く。私たちがこの仕事に懸ける思い

―――社会人の学び直しは「忙しさ」との戦いでもあり、一筋縄ではいかないことも多いかと思います。2人がこの業務に取り組むうえで大切にしていること、拠り所にしている想いがあれば教えてください。

井上:私は「学ぶことは本来、楽しいことだ」という前提を大切にしたいと思っています。

誰かに強いられるのでなく、自ら選びとる学びは、自分のキャリアや人生をより良くするためのポジティブな行為です。

TOEIC®の点数という結果も大事ですが、その先にある「新しいことができるようになった」「自信がついた」という変化の総量が、企業の変革力にも繋がると信じています。

横田:私も一人の社会人として、「忙しいなかで勉強する」ことの難しさは痛いほどわかります。だからこそ、そこに挑もうとする方々の背中を押したい。

『スタディサプリ』のビジョンは「自分らしく学び、生きられる世の中を」です。

これから先、リスキリングの必要性は今の何倍にも高まっていくでしょう。その時に、リクルートという立場で、誰もが手軽に、自分らしく学べる機会を提供し続けること。それが私の仕事の拠り所です。

―――最後に、2人が業務を通じて感じる、社会(働き方、キャリア観)の変化の兆しや、今後の展望について教えてください。

井上:少子高齢化による労働力不足は深刻です。企業は「選ばれる側」になり、優秀な人材を確保するためには「成長できる環境」の提供が不可欠になります。終身雇用が揺らぎ、自分のキャリアを自分で守り育てる時代において、企業のリスキリングは福利厚生以上の意味をもつようになるはずです。

また、直近の具体的な変化としては「インバウンド需要」の高まりを感じています。飲食や観光、交通業界など、現場で外国人対応が急務となっている企業様からの問い合わせが急増しています。

おもてなしの英語ができるかどうかで、顧客満足度も売上も変わる。そうした「現場の武器」としての英語学習ニーズにも、アプリの機能追加などを通じてスピーディに応えていきたいと思います。

横田:英語は可能性を広げる強力な武器です。

企業が社員の「学び」に投資し、社員がそれに応えて成長する。その好循環をつくるお手伝いをすることで、日本企業の競争力向上、ひいては働く個人の人生が豊かになる未来をつくっていきたいと考えています。

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プロフィール

井上 順子(いのうえ じゅんこ)

株式会社リクルート まなびDivision教育支援統括部 法人営業部 部長

リクルートで旅行領域(海外・国内)にて従事した後、教育事業会社にて社会人向けオンライン学習サービスの法人営業立ち上げを経験。その後リクルートに復帰し、現在は「スタディサプリENGLISH」法人向けサービスの責任者を務める。

 

横田 海斗(よこた かいと)

株式会社リクルート まなびDivision教育支援統括部 法人営業部 法人1グループ グループマネージャー

新卒でマスコミ関連企業に入社。リクルートへ中途入社し、法人営業部に配属。現在は大手既存顧客を担当するグループのマネージャーとして、大企業の組織課題解決に向けた英語研修の提案・導入支援をリードしている。

 

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